
ジャミールの館に、香ばしい匂いがたちこめている。ムウは石釜で出来たオーブンを開けると、中から鉄板を取り出した。
「貴鬼、今日はお昼にウインナーロールを焼きましたよ。さあ、手を洗ってきなさい。」
「わーいムウさま!これ全部食べていいんですか?!」
「全部食べたらお腹が痛くなりますよ。」
「大丈夫大丈夫、だっておいら育ち盛りだもん!」
にっこり師匠に笑いかけると、貴鬼は一目散に手を洗いに洗面所に消えた。
「おっと・・牛乳が切れていましたね。仕方ない、街まで買いに行ってくるか・・。」
冷蔵庫のないジャミールでは、腐りやすいものを買い置きしておくことはできない。街までは人間の足なら半日以上掛けて山を降りなければいけないが、ムウならテレポーテーションでものの5分で行って帰ってくることが出来るのだ。貴鬼と自分のコップをテーブルに並べ、出来たばかりのパンを大皿にうつすと、ムウは瞬間移動で街へと降りた。
「ただいま貴鬼、牛乳が切れていたので買ってきましたよ・・・貴鬼?一体どうしたのです。」
牛乳の瓶を抱えて戻ってきたムウは、弟子が部屋の入り口で立ち尽くしているのを見て後ろから声をかけたのだった。師の帰りに驚いた貴鬼が振り返ると、一瞬でその大きな目に涙が溢れ返った。
「ど、どうしたというのです・・?」
「ムウさまぁ、おいらのお昼ごはんが、お昼ご飯がー!!」
抱きついて泣きじゃくる貴鬼を片手で受けとめて視線を室内に移すと、そこにはいつもの・・・招かれざる客が鎮座していた。
「おおムウ、誰もいないから先に頂いていたぞ。」
「シャカ!またあなたですか!」
「昼ごはんの予感がしたのでな。瞑想を中断してまでやってきたぞ。なるべく時間はあらかじめ伝えてくれんかね。」
もぐもぐと口を動かしながら、シャカは不遜にもそう言ってのけた。
大皿に移していたウインナーロールはもう半分以上、あの細い体の中に収まってしまったらしい。
「初めて食べたが、なかなか美味なものだ。君はやはり料理の才能があるらしい。」
「シャカ・・今日という今日は許しませんよ。ジャミールの鉄の掟を教えてさしあげましょう。」
「何かな?それは・・・。」
「働かざるもの食うべからず。今日は一日ここで働いていただきましょうかね・・。」
「ふむ・・・仕方ない、一飯の恩だ、なんでもしよう。」
ふんぞりかえってそう言うと、シャカは一瞬にして、ムウにサイコキネシスで館の外に放り出されてしまった。
「とりあえず水汲みと薪拾い。その後は街に出て托鉢でもしていらっしゃい。」
ぷいっと姿を消したムウのいた窓を見上げて、シャカはぽつねんとその場に立ち尽くしていた。
「一体何を怒っているのかね・・・?」
何故怒られているのかも分からないシャカは、日が暮れるまでムウさまにこき使われ、貴鬼にはより一層嫌われてしまったのだった。
ちゃんちゃん♪
【パンを焼いたのでSSにしてみました。形が悪いなパン・・。素人ですから。でも、ムウさまが貴鬼にパン焼いてたら可愛いな!】
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